新型コロナを予見 示唆に富む米大報告書

2020/4/4 12:00日本経済新聞 電子版

 

地球規模の脅威となる感染症を引き起こす病原体とは、どんなものか。安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が2018年にまとめた報告書は示唆に富む。いま世界を苦しめている、新型コロナウイルスの登場を予見するような分析がみられるからだ。今後の感染症対策にも役立つはずだ。

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米ジョンズ・ホプキンス大学の報告書では、パンデミックを起こすウイルスの特徴を指摘していた


報告書は同大の健康安全保障センターが120人以上の専門家への聞き取りをもとに作成した。様々な病原体の特徴、感染が引き起こす症状、病気の広がり方などに関する科学的知見を踏まえ、注意点や対策にあたっての勧告をまとめた。

 

このなかで、最大の脅威に挙げたのが呼吸器系に悪さをするRNAウイルスだ。インフルエンザウイルスに比べ、コロナウイルスなどには十分な注意が向けられていないと警鐘を鳴らした。潜伏期間中や、軽い症状しかないときでも感染してしまうタイプが特に危ないと指摘しており、まさに新型コロナウイルスの場合と一致する。
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患者から取り出された新型コロナウイルスの写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)

勧告は8項目ある。まず、呼吸器系に感染するRNAウイルスに焦点を当てつつも、幅広い種類の微生物に目配りする必要性を説いた。過去に経験し、要注意ウイルスなどとして記録されているものにとらわれすぎるべきではないという。

 

コロナウイルスに関しては疫学的調査が重要だとした。抗ウイルス薬が極めて少ない現状に懸念を示し、治療薬やワクチン開発の加速を促している。製薬企業、政府、医療機器メーカーが資金を出し合い臨床試験を円滑に進める工夫をすべきだとした。

 

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イタリアでは救急救命員や医療スタッフの感染が拡大した=ロイター

さらに、新たなパンデミック(世界的大流行)の兆候をいち早くつかむため、全世界で診断に力を入れるよう提案。コストの問題はあっても、それに見合う効果が得られるはずだと指摘した。

 

今となれば、どれももっともな内容だ。国境を越えたヒト、モノの移動が増えパンデミックが起きやすい状況なのは世界の共通認識だった。にもかかわらず、勧告は十分に生かされず備えは進まなかった。将来、より致死率の高い病原体が広がるかもしれない。新型コロナ対策の一つ一つの経験を確実に「次」への戦略づくりに生かしたい。

 

(編集委員 安藤淳)

ジョンズ・ホプキンス大学の報告書で指摘した8つの「勧告」の要約は以下の通り。

(1)脅威となるウイルスへの備えに投資を

 パンデミック(世界的大流行)を引き起こす可能性が最も高い病原体はRNAウイルス(注1)で、特に鼻やのど、肺などの呼吸器系に感染するタイプだ。この種のRNAウイルスは地球規模で壊滅的な被害をもたらす危険性が高く、調査・監視、科学研究、対策の開発に資源や資金を大規模に投じるべきだ。

だが、インフルエンザと一部のコロナウイルスを除けば、ほとんど対策は講じられていない。あらゆる病原体の専門的な知識を育成・維持するとともに、動物から人間に感染する病気の情報を集めることで、パンデミックへの備えや研究につながる。

(2)過去の経験に基づく対策では不足

 過去の感染症の事例とバイオテロ対策にもとづき、米国や世界はパンデミックに備えてきた。しかし、取り上げられていない病原体への備えは早々に打ち切られてしまい、対策が硬直的になりがちだ。こうした従来型のやり方から決別し、病原体の性質に基づいてパンデミックのリスクを評価する必要がある。また評価については、綿密な医科学的分析の結果にもとづくべきだ。こうした改善に取り組むことで、パンデミックへの備えや病原体による地球規模のリスクに対する考え方を根づかせる。

(3)呼吸器系に感染するRNAウイルスを優先

 呼吸器系に感染するタイプのRNAウイルスはパンデミックを引き起こす可能性が高い。現時点で優先度が高いのは、インフルエンザと一部のコロナウイルスだ。重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)の流行をきっかけに、コロナウイルスへの理解を深める動きは出ているが、実験室で体系的に調べる取り組みは進んでいない。

 肺炎や気管支炎の原因となるライノウイルスやパラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、メタニューモウイルスなどでも同様に動きはない。この種のウイルスは将来、パンデミックを引き起こす危険性が高く、インフルエンザと同様の調査・監視体制を確立すべきだ。

(4)効果がある抗ウイルス薬の開発に重点

 呼吸器系に感染するRNAウイルスの治療薬として、現時点で米食品医薬品局(FDA)の承認を受けているのは、抗インフルエンザ薬としては「アマンタジン」や「リマンタジン」、「ザナミビル」、「オセルタミビル」、「ペラミビル」の5種類がある。いずれもインフルエンザウイルスだけに作用し、他のウイルスには効果がない。

 抗インフルエンザ薬以外では、C型肺炎などの治療に使われる「リバビリン」しかない。RSウイルスの治療で承認を受けているが、効果が弱く、強い副作用が懸念される。特定のウイルスに効く治療薬が開発できれば、パンデミックを抑えられる可能性は高まる。

(5)RNAウイルスのワクチン開発を優先

 呼吸器系RNAウイルス向けのワクチンも優先すべき課題だ。インフルエンザ向けはあるが、呼吸器系RNAウイルスのワクチンは存在しない。

 いくつかの重要な取り組みが存在する。例えば、官民連携でワクチン開発に取り組む感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)はMERSを引き起こすコロナウイルスとパラミクソウイルス(ニパ)向けワクチンの開発を支援している。

 米国立衛生研究所(NIH)は、どんな型のインフルエンザにも効く汎用ワクチンの開発に資源を振り向けるようになった。最も怖いのが鳥インフルエンザウイルスの一種だ(注2)。汎用的なインフルエンザワクチンは、こうした地球規模で脅威となるウイルスに対して大きな予防策となりうる。

(6)科学的根拠にもとづいた治療法を官民医の連携で

 インフルエンザを除くと、呼吸器系ウイルスに対する治療は科学的根拠に乏しい。どのような治療が有効なのか、合併症で気をつける必要のある感染は何か、どの段階で人工呼吸器を使うのが適切なのか、といった疑問がある。こうした疑問への答えを見つけることで、パンデミックが起きたときに医師の対応力を高められるだろう。

 インフルエンザについて、抗ウイルス薬と炎症を抑える抗炎症薬、抗生物質を併用する治療法の報告が増えている。明確な治療指針を作るために、これらの治療効果がはっきりとわかれば、地球規模の脅威となるウイルスへの対応力につながる。

(7)RNAウイルスの研究には特別な注意を

 パンデミックを引き起こすウイルスに関する研究には特別な注意を払う必要がある。多くは低リスクだが、例えば抗ウイルス薬への耐性、ワクチンに対する抵抗性、感染力の増強といった実験は、国際的な基準である「バイオセーフティー」上の違反が起これば重大な問題を引き起こす。

1977年に出現した「N1H1型」インフルエンザ(ソ連かぜ)は、なんらかのミスで研究所から漏れ出た可能性が指摘されている。こうしたウイルスを扱う実験については、リスクに見合った形で承認するプロセスが必要になる(注3)。

(8)診断法や診断装置の実用化を世界で

 診断技術と診断装置は適用できる病気の対象、診断速度、使いやすさで改良が進んでいる。普及が進めば、感染症に対する状況認識を高めるきっかけになるはずだ。呼吸器系に感染するRNAウイルスへの調査の強化と組み合わせることで、パンデミックを引き起こす病原体の初期のシグナルを捉える能力は大幅に高まる。

 コストや治療効果のほか、隔離病床など病院の資源の制約によって、こうした診断装置の採用が制限されている。しかし、パンデミックへの備えという観点から、費用対効果の見積もりも変わるはずだ。人工呼吸器やワクチン、抗ウイルス薬、抗生物質と同じように考えるべきだ。

(注1)ウイルスには、遺伝子がDNAだけのタイプとRNAだけのタイプがあり、RNAウイルスの方が突然変異しやすいため危険性が高いとされる。危険性の高いRNAウイルスには、コロナウイルスの一部のほか、インフルエンザやエボラ出血熱、デング熱などがある。

(注2)鳥インフルエンザの中で毒性が高い「H5N1型」が最も危険性が高いとされる。

(注3)バイオセーフティーは病原体を扱う施設の基準で、世界保健機関(WHO)が定めている。危険度に合わせて4段階ある。最も高いレベル4については、病原体が外に漏れ出ないような対策を講じている。例えば、施設内の気圧を低くし、空気が外に漏れないようになっている。


2020-04-04 06:25
通常市況
NYマーケットダイジェスト・3日 株安・原油高・ドル高(1)
Fx-Wave
(3日終値)
ドル・円相場:1ドル=108.55円(前営業日比△0.64円)

ユーロ・円相場:1ユーロ=117.24円(△0.10円)

ユーロ・ドル相場:1ユーロ=1.0801ドル(▲0.0057ドル)

ダウ工業株30種平均:21052.53ドル(▲360.91ドル)
ナスダック総合株価指数:7373.08(▲114.23)

10年物米国債利回り:0.60%(△0.01%)

WTI原油先物5月限:1バレル=28.34ドル(△3.02ドル)
金先物6月限:1トロイオンス=1645.7ドル(△8.0ドル)

※△はプラス、▲はマイナスを表す。

(主な米経済指標)        <発表値>    <前回発表値>
3月米雇用統計
失業率                 4.4%      3.5%
非農業部門雇用者数変化      ▲70万1000人 27万5000人・改
平均時給(前月比)           0.4%      0.3%
平均時給(前年比)           3.1%     3.0%
3月米サービス部門PMI改定値      39.8      39.1
3月米総合PMI改定値          40.9      40.5
3月米ISM非製造業指数         52.5      57.3

※改は改定値、▲はマイナスを表す。

(各市場の動き)

・ドル円は続伸。

ただ、海外市場では大きな方向感が出なかった。欧州通貨やオセアニア通貨に対してドル買いが強まった流れに沿って円売り・ドル買いが先行。
22時過ぎに一時108.68円と日通し高値を付けた。
その後108.19円付近まで下押しする場面もあったが、引けにかけては108円台半ばまで値を戻している。

 米労働省が発表した3月米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比70万1000人減と2010年9月以来9年半ぶりの減少となり、予想の10万人減を大きく下回った。

失業率は4.4%と前月の3.5%から大幅に上昇し、労働市場の悪化が鮮明になった。
ただ、市場では「雇用統計はひどい内容だったが、直近2週間の米新規失業保険申請件数が急増していたため、ディーラーはあらかじめアナリスト予想より悪い結果を予想していた」との声が聞かれ、反応は限られた。

 なお、今回の統計の調査時期は3月中旬で、その後に大都市圏でのロックダウンや失業増加が起こっており、新型コロナ感染拡大による経済的影響が完全に反映されているわけではないという。

・ユーロドルは5日続落。

新型コロナ感染拡大に歯止めがかからない中、欧州時間に発表された3月ユーロ圏サービス業PMI改定値が下方修正されたためユーロ圏景気に対する悲観的な見方が強まった。
イタリアなどが求めているEU共通のコロナ債発行についてドイツが改めて反対を表明したことも嫌気されて、24時前に一時1.0773ドルと約1週間ぶりの安値を付けた。引けにかけては週末を控えたポジション調整目的のユーロ買い・ドル売りが入り、1.0828ドル付近まで下げ渋ったものの戻りは鈍かった。
 なお、イタリアとスペインの新型コロナ感染者数は本日、約12万人でほぼ並んだ。さらに、フランスでは高齢者介護施設での感染によりこれまで約1400人が亡くなっていたことが発表され、驚きが広がっている。

・ユーロ円は6日ぶりに小反発。

ただ、NY市場ではドル円とユーロドルの値動きの影響を同時に受けたため、相場は大きな方向感が出なかった。

・南アフリカランドは軟調だった。
先週末の大手格付け会社ムーディーズに続き、フィッチによる南ア格下げを受けてランド売りが活発化した。対円では一時5.67円、対ドルでは19.0909ランドといずれも史上最安値を更新した。市場では「格付け会社による南ア格下げが相次いだため同国からの資金撤退の動きが加速している」との声が聞かれた。

2020-04-04 06:26
通常市況
NYマーケットダイジェスト・3日 株安・原油高・ドル高(2)
Fx-Wave
・米国株式市場でダウ工業株30種平均は反落。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、新型コロナウイルスの感染者数は全世界で100万人を突破。
米国では3日に26万人を超え、人口密度が高いNY州では10万人超に急増した。
経済活動の停滞長期化から景気の大幅な落ち込みが懸念され、売りが膨らんだ。米労働省が発表した3月米雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月比70万1000人減と予想の10万人減を大きく下回り、労働市場の悪化が鮮明になったことも相場の重しとなり、下げ幅は一時550ドルを超えた。
 ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数も反落した。

・米国債券相場で長期ゾーンは小幅続落。
低調な3月米雇用統計を受けて債券買いが先行したものの、取引終了にかけては週末を控えたポジション調整目的の売りが優勢となり下げに転じた(金利は上昇)。


・原油先物相場は大幅に続伸した。

昨日サウジアラビアが提唱したOPEC+の緊急会合開催について、6日にテレビ会議で実施されると報じられた。協調減産の再開期待が高まり、時間外から原油先物は買いが先行。ただNY午前には、IEA事務局長の見解「OPEC+による減産が実行されても第2四半期は石油在庫増」などが伝わり上昇幅を削る場面があった。もっとも、プーチン露大統領が「世界で日量1000万バレルの減産は可能」と発言し、ロシアの6日緊急会合への参加を決定すると原油買いが再燃。米国がメキシコ湾岸の原油生産停止を検討との報道も支えに、買い優勢のまま大引けした。

・金先物相場は続伸。

為替相場ではドルが対ユーロで堅調に推移し、ドル建ての金先物は時間外から売りが先行した。しかしながら、3月米雇用統計が非農業部門雇用者数変化は70万1000人減、失業率が4.4%と市場予想から大幅に悪化したことが分かると、安全資産とされる金に再び資金が向かった。その後も、弱含む米株を眺めながら下値は堅いままだった。







ニュースは、FXブロードネットさんを見ています。


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